月: 2021年1月

様々な周波数応答測定

APx500ソフトウエアには様々な周波数応答測定の機能があることはご存知で しょうか? 実は以下の通り、10種類の測定機能があります。

  1. Frequency Response
  2. Continuous Sweep
  3. Acoustic Response
  4. Loudspeaker Production Test
  5. Stepped Frequency Sweep
  6. Bandpass Frequency Sweep
  7. Multitone
  8. Transfer Function – White Noise signal
  9. Transfer Function – Speech signal
  10. Signal Analyzer (FFT) – White Noise

図1のグラフは各測定機能を使って、ヘッドホンの周波数応答を示したものになります。

図1.周波数応答結果グラフ

#1Frequency Response, #2Continuous Sweep, #3Acoustic Response, #4Loudspeaker Production Test の4つの測定は、同じ技術(指数関数サイン波、またはチャープ技術)を使っています。#1Frequency Responseはシンプルに結果を表示します。これはチャープ信号を使って、短時間で測定ができます。#2Continuous Sweepは位相応答や歪み率等が加わっています。これもチャープ信号を使って測定致します。#3Acoustic Response#4 Loudspeaker Production Testはアコースティックトランスデューサーやスピーカーやマイクロホン等を測定する際に利用致します。また、インパルス応答に対する時間窓やゲートを制御できるようにもなっています。これは、無響室でない場所における反射を除外する際に利用できます。

#4Loudspeaker Production Testは周波数応答や歪み率、位相応答、インパルス応答やスピーカーのRub and Buzzやインピータンス測定やThiele-Smallパラメーター等の測定に利用致します。#5Stepped Frequency Sweepは最も古典的な周波数応答の測定方法です。サイン波を規定の間の周波数においてサイン波を発生させ、スイープしていきます。そして周波数応答、THD+N、THDや位相応答を測定致します。チャープ信号を使った測定に比べると、時間を要しますが、周波数の関数として、ノイズや歪み率を測定する唯一のソリューションであり、デファクトスタンダードの測定方法でもあります。

#6Bandpass Frequency Sweepもサイン波を使ったスイープ測定です。アコースティックデバイスを測定する際に利用致しますが、フィルターを用いて、高感度な信号を使ったStepped Frequency Sweepになります。Stepped Frequency Sweep は、広帯域でフィルターがかかっていない為、ノイズや歪みが含まれた結果を表示しますが、この測定を使うと、選択したWindow枠内の結果になるので、非常に高感度な結果を得られます。

#7Multitone Analyzerはオルガンのような多くのトーンを同時に利用した測定で、全てのキーを同時に下げていくようなトーンの音になっています。この測定のメリットは、チャープのような短時間での測定もありますが、ノイズやStepped Frequency Sweepのような非調和相関信号も測定ができます。逆にデメリットとしては、クレストファクターがサイン波やノイズやTD+Nの値よりも非常に高い値がでてしまうことです。これは高調波歪みや混変調歪み等が含まれている影響があります。

#8,9Transfer Functionはデバイスの周波数応答に変わる測定方法になります。昨今のモバイルハンドセットなどの通信機器はサイン波や他の信号を打ち消す最適な信号処理を行っており、従来の測定では、問題となっていました。Transfer functionはソースまたは刺激信号と応答信号の間の相関性を見出す測定になります。Transfer function に欠かせないものは刺激信号が周波数内でエネルギーを持っていることです。広帯域のノイズはテスト用としては非常に大きな信号ですが、人間のスピーチを録音して利用しています。この信号は、100Hz以下や4-10kHzの低いところでは、エネルギーは保有していませんが、有用な測定を行うには、何秒かのスピーチの情報を平均化する必要があります。

#10Signal Analyzerはホワイトノイズを再生する際に、FFTスペクトラムから周波数応答を読み取ろうとする際に利用致します。多くの平均化が求められますが、フラットな周波数応答はフラットなスぺクラムを生み出します。

精度、解析度 全てのチャープをベースにした測定やTransfer functionは非常に高い解析度の測定になっています。短時間の測定の間に数千の測定ポイントを取得する精度となります。一方、Stepped frequency sweeps やMultitoneは100程度の測定ポイントで実行しております。 ノイズ耐性チャープをベースとした測定やMultitoneやBandpass Frequency Sweepは、あいまいなノイズに対して、高い耐性があります。一方 Stepped Frequency Sweepsや Transfer FunctionやSignal Analyzerはノイズを排除できませんし、また環境から発生するノイズによって、 バイアスされる結果となりえます。

詳細は以下のサイトをご参照願います。

www.ap.com/blog/how-many-ways-can-we-measure-frequency-response/

オープンループオーディオテスト

クローズドループとオープンループオーディオテスト

通常のオーディオテストとしては、クローズドループを使っています。

例えば、オーディオアナライザーから発生される高音質のオーディオ刺激信号はDUTに入力し、DUTの出力信号を得られ、解析できます。クローズドループテストは、パワーアンプやオーディオ変換素子、ラウドスピーカーやマイクロホンやミキシングコンソール等の オーディオが即座に透過する装置の測定用途に利用されます。

オープンループはオーディオ信号が発生されず、DUTを介さない中で、測定する方法です。

オープンループテストは、特定のオーディオデバイス向けに利用されます。例えば、再生のみの機器(ブルーレイ/メディアプレーヤー等)はオーディオ入力素子がなく、DUTや接続しているサーバーからのデジタルオーディオファイルとして発信する刺激信号が必需となります。また、DUTからの出力がデジタルオーディオファイルとなる録音デバイスや、PCやタブレット、スマートフォン等多くのデバイスが再生と録音機能を持った装置となります。

これらの測定は個別に測定する必要があります。

オープンループテストを必要とする三つめのグループとしては、TVやラジオ等のストリーミング要素のある放送ネットワークの機器です。この場合、システムの入力は、出力は距離があり、分離されているので、オープンループ技術を駆使する必要があります。

オープンループテストでは、パイロットトーンやトリガーとなる信号が必要となります。その為、アナライザーは入力信号におけるDUTの応答を的確に見出すことができます。

再生用テスト信号の生成

オーディオ機器の再生機能のテストを行うには、高音質で、明らかにオーディオ信号とわかるものを割り当てる必要がございます。Big6のようなレベル、ゲインや周波数、THD+Nやクロストーク等はサイン波を使って測定できます。また、複雑なテストは段階的周波数スイープやピンクノイズ等が不可欠となります。

今回のようなテスト信号の生成用に、Audio Precision社としては、該社のサイトから無料でダウンロードできます、APx Waveform Generator Utilityを準備しております。これは700kB程度の小さなプログラムで、様々なサンプルレートや、チャンネル数やビット長等を生成できるオーディオテスト信号として利用できます。これらは、シーケンスモードで利用できるように設計されています。このユーティリティーソフトを使った周波数スイープは、APxのStepped Frequency Sweep measurementにあるリストの一部として認識し、測定できます。お持ちのアナライザーがデジタルI/Oモジュールを搭載している場合は、デジタルループバックで録音し、高音質のwavファイルを生成できます。

図1.Waveform Generate Utilityのプロパティー一例

frequency response measurementsにおいては、APxソフトウエアは以下の測定が可能です。 (1) オープンループ設定, (2)特定の刺激応答(例、Stepped Frequency Sweep, Multitone Analyzer, Continuous Sweep and Acoustic Response)便利なことに刺激し応答のwavファイルを自動生成致します。ただし、Transfer Function measurementにおいては、オープンループ周波数応答測定は可能ですが、wavファイルの生成はできません。

再生機能向けのテスト

オーディオデバイスの再生機能オープンループテストの方法は図2に示しました。この場合、DUTの出力はオーディオアナライザーの入力に接続され、手順としては以下の通りです。

  1. ジェネレーターを設定し、刺激信号をwavファイルとして保存します。
  2. 必要であれば、wavファイルをエンコード(例、mp3フォーマット等)致します。
  3. DUTに上記の刺激ファイルをインストールします。
  4. APx500 softwareのアナライザー測定を開始致します。
  5. DUTからテスト信号を再生します。
  6. オーディオアナライザーはDUTからの信号を得て、解析結果を表示します。
図2.オーディオデバイスの再生機能オープンループテスト

Wifiスピーカーやスマートスピーカー等のアコースティック再生製品の測定においては、特別な手順が必要となります。この場合は、APx Acoustic Response measurementで測定致します。その際、時間窓は信号を得てからの設定となります。

録音機能テスト

録音機能デバイスのテストは、再生用のテストと反対の設定になります。オーディオアナライザーはDUTの入力に接続し、アナライザーの入力は、’ File (Digital Units)’に設定致します。これはwavファイルからの入力を意味します。アナライザーからの入力信号はDUTに録音され、そのファイルはアナライザーで解析を行うことになります。図3に一連の手順を示しました。

1.オーディオアナライザー内の刺激信号を生成し、DUTで録音開始いたします。                                 2.Signal generatorを開始致します。                  3. 録音を終えたら、停止致します。                   4. 録音したファイル保管し、APxソフトウエア上に移行させます。     5. ファイルの形式がwavファイルでない場合は、wavファイルの形式にデコードします。                               6. wavファイルを測定、解析します。

アコースティックデバイスは特別な手順が必要になります。例えば、マウスシミュレーターを使った信号等が効果的です。

図3.オーディオデバイスの録音機能のオープンループテスト

以上がAPx500オーディオアナライザーを使ったオープンループテストになります。

詳細は以下のリンクを参照願います。

https://www.ap.com/blog/conducting-open-loop-audio-tests-with-apx-audio-analyzers/