月: 2021年7月

スルーレートまたは立ち上がり時間の測定

パワーアンプに関連する話でよくある問い合わせがスルータイムをどのようにして測定すればよいかという点です。今回は基本的な測定方法に関して説明致します。.

スルーレートはアンプの最小出力レベルから最大出力レベルまで急速に変化する入力信号に対して、アンプの出力が変化する最大の割合の事を言います。スルーレートは時間に対する振幅の変化(dV/dt)として表され、通常はV/μsで示します。スルーレートは大きな信号性能測定の際に利用されます。.

アナログとデジタルのアンプにおいて、スルーレートの限界は、アンプのキャパシタンスの充電または放電するために使用できる電流により設定されます。通常10%~90%までの範囲で遷移範囲は測定されます。センターが0Vの最大出力アンプが10V Vpk-pkであるアンプの場合、遷移時間は-4V~4Vになります。

立ち上がり時間と帯域幅には相関性があります。一例としては、-3 dB BW = .35/Tr があります。

例えば、下図にありますパワーアンプは立ち上がり時間は約5.84 μs.です。先程の変換式を使うと、約60kHzの帯域幅に見えます。実際には53.2kHzの帯域幅がこのユニットのサインスイープ測定になります。

測定に関して

DUTよりも高速な矩形波の信号発生器やステップ発生器はスルー測定が不可欠です。 発生器はDUTを駆動するにあたって限界に近い振幅を適用することができます。パワーアンプの多くは、ある程度のゲインを確保できるので、数ボルト範囲での発生器の出力振幅は安定しております。測定デバイスは十分なダイナミックレンジや帯域幅や時間解像度を持っていることが前提になります。

オプションであるAG52とBW52はAPx500シリーズを使ったスルーテストに必要な機能です。AG52は非常にピュアな矩形波信号発生器を持ったアナログジェネレーター機能で、立ち上がり時間やスルータイムを測定する際に適しています。BW52は1MHzの帯域まで拡張している機能です。AG52矩形波発生器の立ち上がり時間は全ての出力レベルに対して一定です。下図はその一例です。

APxジェネレーターの矩形波の出力を200MHzの帯域幅で1.6 μs立ち上がり時間を測定した結果です。

APx555の固有のスルーレートはジェネレーターからの信号の振幅に依存します。下図はその一例です。

このグラフは、アナライザー自身が非常に小さな信号の立ち上がり時間を最大出力時にでさえも描写することができます。

スルーレートを測定するには、1MHz帯域幅まで設定することが肝要です。次の図はSignal Path SetUpで設定する際のキーポイントを説明しております。

dV/dtはアナライザーのスコープモニターにカーソルを置く事で、測定できます。pk-pkポイントの10-90%までの範囲でカーソルを設定できます。下図はAG52ジェネレーターを使って矩形波、1MHz帯域幅、全てのフィルターを外した設定で測定した立ち上がり時間の結果です。

プロット(ΔDelta)の右下部分のカーソルの凡例に示しているように、プロットはdtで1.602μs、  dVは9.046Vを示しています。

次にクラスDスイッチングアンプのテストに移ります。下図は測定例になります。

この場合、DUTは高周波スイッチングノイズを除去する出力フィルターを備えています。リップルはDUTのろーぱずフィルターを介して入る、残留スイッチング信号です。他のDUTにおいては、  Audio Precision社製品のスイッチングアンプ測定フィルター(製品番号AUX-0025/0040/0100)を追加して高周波のノイズを除去して測定しております。これらのフィルターは最大のスルーレートを得るのにインパクトがあります。

DUTはオーバシュートが見え、過渡時間として5.84μsが費やされています。カーソルは10.05 Vpk-pkの10-90%の間で電位差を示しており、スルーレートは、約1.72V/s(=10.05/5.84)となります。

スルーレートと帯域幅の間の相関は以下の方程式で表されます。

Frequency (max) = SR/(2*π*Vpk)

このDUTでは、スルーレートは1.72 V/µsで出力は、10 Vpk-pk,または5 Vpkと測定しました。     これらの値を上記式に当てはまると、54.8kHzの結果が得られます。

次のプロットは、入力振幅に対するDUTアンプのスルー応答曲線を示しています。

入力レベルは約1.7 Vpk-pkの割合で線形性のスルーレートになっていることが分かります。それ以上は飽和しています。このDUTは1.7 Vpk-pkスルーレートで評価し、大きな信号スイングを得る最適の場所となります。スルーレートは1.675 V/µsと測定できました。

振幅におけるゲイン、立ち上がり時間、スルーレートの相関性

ゲインは信号振幅を乗算しますが、立ち上がり時間は乗算や除算は致しません。アンプはソース信号のスペクトルを忠実に再現するようになっています。矩形波ソース信号の場合、最小及び最大レベルの値は、継続時間のDCになります。ACは過渡エッジとなります。純粋な矩形波の場合、基本波の奇数倍音であり、システムの帯域幅の限界まで拡張されます。

ゲインは、スルーレートに何倍も効果をもたらします。それは、全体の電圧スイングが増加し、それによってスルーレート方程式の分子(V/μs)が増加することで、スルーレートも増加することとなります。これはスルーレートと出力振幅尾グラフからも分かります。

ダイナミック相互変調歪み(DIM) と過渡的相互変調歪み(TIM)

DIMとTIMは矩形波、サイン波ソースを組み合わせたアンプへの動的な刺激信号として組み合わせるテストとして、DUTを介した2つのソース信号間の相互変調歪みのテストを可能としています。APx555にはこれらの機能が搭載しています。このテストの基本的な概念は、非常に高いかと信号(矩形波)とサイン波を組み合わせて、オーディオコンテンツの非常に動的なスペクトルを表す信号を生成できます。DIMはIEC 60268-3, sec. 14.12.9で規定されています。

APx500ソフトウエアでは、シーケンスモードではAdd Measurementで追加ができ、ベンチモードでは、IMD Type:DIMを選択して頂くと測定可能となります。

詳細は以下のリンクを参照願います。
www.ap.com/blog/measuring-slew-rate-or-rise-time/