Audio Precision社の方形波対応
方形波はシステムの周波数や位相応答等を視覚で解析するに際して非常に有用な解析方法です。システムチェックやDSPの手順確認やA/B設定、部品比較等に非常に有用です。
はじめに
理論上、方形波はサイン波の基本波と全ての奇数波の高調波から形成されます。各高調波の振幅は1/nで、例えば5次の高調波の振幅は基本波の1/5になります。しかし、完全な方形波を形成するのは決して簡単なことではありません。
下図は高品位15MHzファンクションジェネレーターで生成したサイン波の周波数ドメインのイメージになります。多くのエンジニアはタイムドメインでサイン波を利用しておりますが、周波数ドメインのイメージはDUTを通した前後のサイン波の質を見るのに、特別な自己診断機能を提供してくれます。
奇数次高調波の消失がはっきりと分かります。しかし、偶数次高調波は約60dBにあることが分かります。完全な方形波は偶数次高調波が無い状態を言います。1MHzでは偶数次波は奇数次波より12dB低い状態です。これは、DUTの実際の情報を方形波のテスト信号の歪みから簡単に観察できることを意味しています。相互変調は90dBで基本波よりも低い値ですが、これはDUTの潜在的な問題に起因します。
比較として下図はAudio Precision社のAG52オプションで生成した方形波になります。
これはあらゆるオーディオアナライザーでも最上の方形波になります。今ご覧になられているのは、基本周波数1KHz 0dBVで、奇数次波は1.2MHzまでになります。ノイズフロアが約-120dBVであることが分かります。しかし、奇数次波の正確な間隔を判別するのは難しい状態です。下図はさらにズームした画面になります。
ズームにして観ると、2次高調波で-110dBV以下で、6次では-120dBVよりも低くなっていることが分かります。
方形波の形状は、奇数次波の数と、どの程度周波数と振幅で正確に生成されたかによります。信号の直角度は奇数次波を追加することで改善されます。アナライザーの取得チャンネル帯域幅を変えることで、1KHzの方形波で奇数次波の効果を見ることが可能です。下図はその例になります。
奇数次波の帯域幅を増やすことで、波形のトップと底辺が平らになっていることが分かります。さらにエッジも直角になっていることも分かります。最初の3つのプロットで確認できるリンギングは信号の信号生成に有効な産物です。このリンギングをギブス効果と呼びます。
Audio Precision社の提案
BW52はAG52の高性能の部分を補完します。1MHz帯域幅で完全な方形波を維持することで、DUTの欠陥を見つけることにも役立っています。百万ポイントのFFTと24ビットのA/Dコンバーターがノイズによって観測できない細かい解析を可能としています。
それでは、ステレオレシーバーを通してAG52/BW52を使って、タイムドメインと周波数ドメインの信号表示を見てみましょう。下図の例は、左側にタイムドメインの方形波で右側に周波数ドメインの応答を示しています。
高周波数で見られる、トップと底辺のフラット部分は、低周波数域でもトップと底辺が完全に平らであれば、同じように見ることができます。これは、高周波数域のロールオフと立ち上がりがエッジの部分で特に顕著に見られます。一方低周波数域のロールオフと立ち上がりは、各周期のトップと底辺に影響を与え、エッジは殆ど乱さないような傾向があります。
下図のアクティブパスフィルターは周波数ドメインでは効果的な見えますが、応答においては異常なところが見受けられます。しかし、タイムドメインでは、各周期で位相が180度ずれていることが分かります。
高品位な方形波は正確な結果を求めるのには非常に価値あるモニタリングツールです。アンプが出力に対して、即座に増減しない際に、スルーによる歪みと、原因となる歪みを表示する為に、方形波とサイン波を混合した刺激信号であるDIMを利用致します。これは通常は使いませんが、大電圧を振るような高電力アンプの設計において、DIMは問題を発見する手段として利用します。
最後に
多くのオーディオアナライザーは方形波を発信できる機能はもっておりますが、不安定な帯域幅での提供やリンギングが見られます。これはFFTの帯域幅や解像度が限られていることからと
見受けられます。これに対して、Audio Precision社は高品位な方形波、広帯域幅での測定環境や長いサンプルレートを保有するFFT長を提供することで、これらの問題を解決し、測定環境を
提供しております。
詳細は以下のリンクを参照願います。
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