シーケンスモード

シーケンスモード

APx500ソフトウエアは2つのモードで、オーディオデバイスのテストの際に得たデータを読取り、 確認することが出来ます。 今回はその一つであるシーケンスモードについて、説明致します。

メーター表示
シーケンスモード、ベンチモードを備えたAPxソフトウエアはRMSレベルやTHD+N、周波数等のデータを測定しますが、各々のメーター、表示は基本的に異なっています。シーケンスモードでは、ほとんどの結果はFFT解析を介して、導きだすのに対して、ベンチモードは時間軸をベースにしたデジタルフィルターを用いた結果から導き出します。その関係もあり、データの読取りレートもベンチモードでは、最大250回/秒に対して、シーケンスモードでは、20回/秒、それ以下に限られています。

安定化に関して
オーディオデバイスのテストはDUTから発するサイン波を使って測定致します。周波数や振幅や信号の伝搬を有する刺激信号はDUTや信号発生器、各解析部からの電気回路から発するものです。繰り返し、良好なオーディオ測定を行うには、過渡がなく、メーターが落ち着いた安定した状態でデータを取得することです。

図1はAPx555のアナログループバックを使って、ベンチモードの250回/秒のレートでRecorder measurementで測定した周波数とTHD+Nの結果です。今回は、APx Waveform Generator Utility を用いたwavファイルで、20Hz-20kHzの間で11地点の周波数スイープを設定した上で、測定しています。はじめは1kHzのパイロットトーンで、周波数を急激に変化させる度に、THD+Nは30%以上のスパイクし、1,2秒後0.0003%の状態に安定させます。図2は図1のハイライトを拡大したものです。各読取りポイントは4ms間隔になっています。過渡スパイク後で安定した状態でTHD+Nメーターは表示されております。クローズドループのテストでも、安定化は非常に重要な要素です。

図1.1.0Vrmsで20Hz-20kHzの周波数の間で11ポイントスイープさせた周波数、及びTHD+Nの測定結果


図2. 図1のTHD+Nの赤色部分を拡大

シーケンスモードにおける安定化設定
シーケンスモードでは、各々の測定は、安定化したパラメーターを保有しています。安定化制御は、Signal AcquisitionやAnalysis dialogのSettling tabで行えます。これは、各測定設定項目にあるAnalyzerの下にある“Advanced Settings…”のボタンをクリックしたら、開きます。図3では、THD+N測定の設定例(アルゴリズムモードをFlatとAverageの場合)を示しています。その際、 Enabling Settlingのチェックで利用の有無を選択できます。

図 3. THD+N測定安定化パラメータ設定例

双方のアルゴリズムは遅延時間や遅延周期を制御できます。これはシステムが安定化するまでの待機時間を設定する際に利用致します。これらの設定で図1のようなグラフ表示を実現します。 今回の場合、遅延時間は1秒で設定しています。遅延周期制御は時間ではなく、サイン波を使って設定します。システムが遅延時間よりも、実際の遅延に即した時間変換を実現します。例えば、遅延時間を20msec、遅延周期を20とデフォルトで設定した際、周波数20Hzでは、20 x (1/20 Hz) = 1.0 秒の時間に相当します。つまり、20Hzではシステムは1秒は待った上で測定に入ることになります。20kHzでは、システムは20msecの遅延時間を保有することになります。

Flat アルゴリズム
Flatアルゴリズムは特定の時間窓の範囲での連続した読取データの流れから測定を行います。  時間窓の幅は、Settling Time とSettling Cyclesの間で大きい値を取ります。許容範囲の± t の間で読みこむ時間窓の中で、安定化した最新値を値とみなします。

Average アルゴリズム
Averageアルゴリズムは特定の平均時間内の平均値を計算します。これは、Noisyな信号でも有効となります。

タイムアウト
Flatアルゴリズムでは、Noisyまたは不安定な状態やパラメーターが適切な値でない場合は、タイムアウトになることもあります。シーケンスモードでは、10周期または時間内で、不安定な場合は、タイムアウトが発生します。この場合、最新の5周期または時間の時間窓の平均値を読み取るようになっており、図4のような“T” の表示が描写されます。

図 4. ステップド周波数スイープにおけるRMSレベルの結果表示において、タイムアウトの例

シーアライアンスでのメーターの実測
シーケンスモードでのメーターの測定は実測値になります。これは、連続的に更新してグラフ表示します。これらの値を安定化させるには、Run Sequenceボタンか、Run Selected Measurementメニューを使って、シーケンサーを走らせる必要があります。

複数の結果を伴う測定
複数の結果を伴う測定は各々個別にパラメーターを設定することになります。例えば、ステップド周波数スイープ測定ではMSレベルとRMSレベル(AC+DC)、THD+Nと位相の安定化パラメーターがあります(図5にて例示)。全てのメーターはデフォルトで可能にできます。但し、処理を高速化するには、必要なものだけenableにすることをお薦め致します。

図5. Stepped Frequency Sweep測定の Signal Acquisition and Analysis設定ダイアログ

シーケンスモードで安定化の読取りがうまく行かない場合、Recorder measurements を使って、何が起きていているか確認することができます。(特にベンチモードでは、250回/秒まで読み取れますので、細かく解析できます。図1のような設定においても、遅延時間や、適切な安定化時間等を見つけるツールともなります。

詳細は以下のサイトをご参照願います。
www.ap.com/blog/settling-part-1-sequence-mode/