月: 2020年6月

サウンドカードを使った測定

APx500 Flexはサードパーティー製のオーディオインターフェースとAPx500ソフトウエアを使って測定できます。APx500ソフトウエアはVersion4.2 以降、サードパーティー製のASIOオーディオインターフェイスに対応しています。これにより、Automotive Audio Bus®(A2B)や Dante™やFocusrite RedNet PCIe®サウンドカードやSoundwire™ MIPI Interface®などの他のインターフェースとASIOインターフェースを介して測定できます。

多くのオーディオ測定が従来のAPxアナライザから見いだされる自らの機器の低ノイズや高い入力電圧やわずかな歪曲の測定だけを求めているのではありません。例えば、スピーカーの製造ラインでは、代表値としえ80~114dBSPLの間で測定しています。マイクの感度においても1Vrmsよりもはるかに高い入力信号を求める必要もありません。多くの工場は80dBSPLのような騒音があり、その中でマイクロホンの測定が容易になされているのが現状です。

Acoustics Measurement vs ASIO Interface Residual vs APx555 Residual

例えば上のグラフはVrmsで示した3種類のFFT特性ですが、

1.50mV/Pa感度のマイクロホンの出力で、1kHz時に1パスカルのサイン波を発生しています。

2.同様の条件で、ASIOオーディオインターフェースの高調波歪みとノイズを表しています。

3.APx555Bを使って、同条件での高調波歪みとノイズを表しています。

結果、1の場合、-36dBのTHD+Nを得られ、2のASIOインターフェースは28μVの機器自身のノイズと50mV時では-65dBのTHD+Nが、3のAPx555Bでは840nVrms、50mV時で-96dBのTHD+Nの結果が得られました。

つまり、APx555BはASIOより50dB程低いノイズ制御がある一方、ASIOは約30dB程アコースティックの周りのノイズよりも静かであることが分かります。

オーディオプレシジョンが設立する5年ほど前は、Creative Labs™ SoundBlaster®がPCサウンドカードとして隆盛を誇っておりました。その時点ではオプションにも加えることはなかった時代ですが、35年経った今は、状況が大きく変わりました。

高品質のDAコンバーターやADコンバーターが低価格のオーディオインターフェースの良さを引き出すような今般では、APx500FLEXは、価格と測定環境、性能との間のバランスで選ぶような製品として位置付けるものとして、評価される製品と認識しています。

サウンドカードでは、高出力アンプや低ノイズ・低歪みのDAコンバーターやADコンバーター等多くのデバイスは測定できないかもしれません。しかし、ASIOインターフェースやサウンドカードはスピーカーやマクロホンやヘッドホンなと充分に測定する機能はあります。ただし、APxアナライザに比べると、忠実に、ダイナミックレンジやその他機能を測定することは難しいことも否めません。

例えば、Bluetoothヘッドホンやジッター測定等ユニークな測定等APx500Bアナライザでないとできないものとすみ分けを行いながら、各製品共存していければと考えています。

さらに詳しいことは以下のサイトをご参照願います。

一般的な部屋でのスピーカーのアコースティック測定

スピーカーの周波数応答測定は、非常に重要なものです。特に自由空間での測定は代表的なものです。無響室を備えているお客様であれば、特に気にする必要はありませんが、必ずしも誰もが測定できる環境下ではありません。

今回APx500ソフトウエアを使って、一般的な半残響室で無響室の環境に近い測定をご紹介致します。ただし、スピーカーや部屋の大きさによって、数百Hzそれ以上の周波数の測定が行えるものと致します。

技術、理論上の確認を行いたい際は下記のリンクからApplication Noteをダウンロード頂ければ、参照できます。

測定で利用する際の部屋は周囲の騒音が低いレベルである点やスピーカーの指向方向に対して、距離があることが望まれます。図1のように、マイクとスピーカーの距離d(Mの3倍以上の距離を確保)し、可能であれば、10倍程度の距離を保てるようなスピーカーや部屋の広さが望ましいところです。

図 1. Schematic of loudspeaker on-axis measurement showing the direct sound path and the path of the nearest reflection

音はDUTからマイクロホンまでの距離dに対して進むのと一方、床や天井、壁等の反射による反射音が2dRの距離で進んできます。

最も近い反射時間はT = (2dR – d)/c となります。cは質問時の音速(約344m/sec)です。高さ2.4-3mの天井の一般的な部屋ではTは約5-6msecです。

図 2. A loudspeaker’s measured Impulse Response with the time window cursor positioned at T = 5 ms after the main impulse.

主インパルスの後に発生する細かいインパルスは反射によるものと思われます。(図2参照)また図3のような目立ったエネルギー曲線(高調波)としても判別できます。

図3. The Energy Time Curve result.

図2や3の点線は5msec時に引いています。APxソフトウエアは新たに設定した時間枠でRMSレベルを再計算致します。

図4はT=5msec(青)と1sec(紫)時におけるスピーカーのRMSレベルの結果を示しています。

灰色部分は1/T=200Hz時以下となり、データとしてあまり正確でない部分です。図4の結果からは400Hzから1kHzmでの周波数が非常に近似したデータとなっています。

図 4. The RMS Level result with curves corresponding to time windows of 1.0 s and 5 ms after the main impulse.

またその他スピーカー測定の環境としては、

・長方形の部屋であること。その際スピーカーとマイクロホンは対角線上に配置し、壁の反射による影響を防ぐように致します。

・2ウエイ、3ウエイのスピーカーに関しては、マイクをツイーターに向けることで高い周波数の測定にも有用になります。

詳細は下記のサイトでも参照できます。

APx500オーディオアナライザのアナログ入力性能は?

APx500ソフトウエアのアナログジェネレーター機能を使って決まった出力範囲を定められる一方、今回アナログ入力レンジの挙動に関して説明致します。

アナログ入力レンジ

APxオーディオアナライザの一般的に残留ノイズは1.0-1.4マイクロVrmsの間で変化します。一方、図1の通り、残留ノイズがより低ければ、周波数応答を使って、100ナノVrmsまたはそれより低いレンジの測定できます。

図 1. FFT spectrum of typical APx555 analog input noise (320 mV input range, input shorted, FFT bin width = 1 Hz, 100 averages)

APxオーディオアナライザでは、入力タイプ(バランス、アンバランス)や機種によって、80~300Vrmsまで上限の電圧測定を変えることができます。つまり電圧測定はダイナミックレンジ180-190dBの範囲まで広げられるようになっています。これまで180dBのダイナミックレンジのアナログ回路や120dB以下のADコンバーターでさえも物理的には測定が困難であったのですが、数10ナノVから数100Vまでの広範なダイナミックレンジの電圧測定を可能に致しました。

APx500シリーズは10dB刻みの入力ステップに対応しています。例えばAPx525Bは標準で入力レンジが0.32,1,3,2,10,32,100,300Vと対応しており、APx500Bは6dB刻みでと高性能な入力レンジを保有しています。

オートレンジ

APxオーディオアナライザは標準でオートレンジという、入力レベルを自動的に変更きる機能を備えています。オートレンジをイネーブルにしたら、各チャンネルの最初の入力時における瞬時電圧を検知し、自動的にチャンネルの入力レンジに対する最低レンジを自動的に設定致します。このレンジングシステムは高電圧による損傷にさらされないよう、内部回路を保護する機能として非常に重要な役割をになっています。 

また、図2のように測定レンジが青のバーで記されているようにオーバーラップしています。レンジングシステムとしては、最小の320mVは320mVを10%超える範囲まで対応しており、1Vのレンジも10%の範囲を超えるまでは標準対応となっています。その後3,2Vのレンジに上がっていきます。2Vrmsから下げる場合は、3.2Vのレンジは約0.9Vrmsまではカバーします。このようにレンジのオーバーラップした階層機能によって測定レンジを充分にカバーする構造となっています。

図 2. APx525 analog input ranges. (Note: approximately 5 decades removed from horizontal axis below 10-1 V).

入力レンジインジケーター

図3のような、APx500ソフトウエアユーザーインターフェースの右下にあるステータスバーにあるインジケーターはアナログの入力レンジを表しています。値は常に変化しています。この例では、APx555Bの2チャンネルを表示しております。チャンネル1は310mVでチャンネル2は620mVとなります。

図 3. The APx500 status bar, showing the analog input range indicator.

固定入力レンジ

オートレンジ機能は自動レンジを好まない規定の測定には適していません。そこでシーケンスモードで個々の測定を行う機能があります。図4に示されているようにAdvanced Settings button を使って設定できます。ベンチモードではオートレンジ機能は対応しております。またInput Configuration control groupの中の Input Range buttonからも設定ができます。ただし、入力電圧がMinimum Rangeで規定した電圧を超えて入力する場合は、次の上のステップの電圧レンジとなり、元には戻らないので気を付けてください。とはいえ、過電圧による破損を防ぐ設計思想となっています。

図4. Accessing the Input Range controls from a Sequence Mode measurement.

オートレンジ機能を使わないケースとは?

デフォルトではオートレンジ機能がイネーブルとなっていますが、この機能を使わないケースとして、考えられるのは、

1.リレー部品等を使った回路で周期の切り替えが多数入っている製品の測定 

2. 周囲の騒音レベルが影響を及ぼしそうなアコースティック測定      

3. 測定が開始後にレンジ変更が発生する際のチャープ測定          

4. 波形をファイルに保存するような測定

帯域外ノイズ

入力レンジに関してもう一点懸念しておくことは帯域外ノイズの存在です。APxアナライザはフィルターを内蔵しており、緻密な入力管理状態ですが、高い周波数ノイズを含んだ入力信号等を測定する場合は、うまく反映されないケースが生じます。例えば、D級クラスのパワーアンプの測定の際にはこのような状況が発生します。その際は、ローパスフィルターの機能となるAUX-0025またはAUX-0040の利用をお薦め致します。

DC電圧

入力チャンネルがDC結合の場合、電圧も入力レンジの選択に左右されます。特に気を付けるのはAPx582B/585B/586Bのような8チャンネル対応品のケースです。AC結合はデジタルフィルターを内蔵しておりますので、DC電圧が見られる解析を伴う回路に関しては、DCとACが混在混在した充分に考慮のいるレンジの選定が強いられます。このような際はAUX-0100という8チャンネルのプリアナライザーフィルターの使用をお薦め致します。これは高周波数の帯域外ノイズを除去する機能もあります。

さらに詳細内容をご確認したい際は以下のリンクを参照願います。

The “Big Six” Audio Measurements(Big6オーディオ測定)

ベンチマークはR&Dの開発チームの指標として使われますが、オーディオテストの世界ではDUTの性能を示す「Big6」という数少ないベンチマークが代表的なものとして活用しております。

         ・Level

         ・周波数応答

         ・全高調波歪みとノイズ

         ・位相

         ・クロストーク

         ・信号とノイズの比率(SN比)

①Level

最も基本的なオーディオ測定に使われる要素で、装置がどの程度のエネルギーを出力するのか?一方GainはAmplitude(振幅)を共通認識としての測定単位として利用されています。

各DUTはいくつかのLevel測定を持ち、エンジニアは目標となるLevelを設定して測定にあたっております。例えば、

・入力Levelは1Vや1Wやその他単位を使って出力Levelを導きだします。

・入力LevelはTHD+N1%のような出力の歪みを生み出します。

・あるLevelは操作卓で心地の良いノイズ性能を生み出します。等々

これらの値は、参照Levelを使っての測定結果となっています。

例えば、周波数応答測定は、中域周波数のLevelの相関性を使って表示しています。

THD+Nは特定のLevelの測定を行った結果を表示しています。等々Level測定を用いたGain考察例

DUTの入力電圧に対する出力電圧の比がDUT電圧のGainとなります。

またあるDUTはGainの調整が出来ず、固定であるケースもあります。さまざまなGainからLevelを測定するケース

ボリューム制御やGainに影響を及ぼす設定等のもつDUTはGainを変更できる装置です。

測定や設定に際して、望むような結果を導くDUT制御設定ができます。

②周波数応答

周波数応答は明らかに異なる周波数をもたらしているDUTの出力Levelを表示致します。

通常、全周波数応答測定は、2,3トーンから構成しています。同じLevelでトーンが発生すると想定したら、DUTの出力レベルは、それぞれの周波数において、表示されます。

全範囲の周波数応答測定はさまざまな方法で行うことはできますが、一般的には低周波数域から高周波数域へサイン波をスイープさせます。結果は平坦なグラフが表示されます。これは、DUTが全ての周波数に対して、同等に応答していることを示します。

下の図はその一例です。

Figure 1: Typical DUT flat frequency response curve.

③THD+N(全高調波歪み+ノイズ)

高調波歪みはオーディオ信号の新しいトーンに対する望まれていない追加の産物です。ある周波数F1のサイン波の信号にはF2,F3と2次、3時の高調波が発生しています。これらの高調波の合計が高調波歪みとなります。ところがノイズを除去して高調波を測定することは困難なことです。そこで一緒に測定することと致しました。この手法は特別ですが、広く受け入れられている性能測定となっています。

Phase(位相)

位相測定は参照する波形に対して、サイン波のような周期的な波形のサイクルにおける時間のオフセットに対して正か負を示す指標として利用されます。参照するものはシステムの中の異なったポイントにある同等の信号や違ったチャンネルにある関連した信号を利用します。

Figure 1: Demonstration of two channels being out-of-phase

この位相測定は装置の入出力やチャンネル間の位相に利用されます。位相変移は周波数により変化しますが、ある周波数の位相測定や周波数スイープの位相応答のプロットに使わることは珍しくありません。

⑤Crosstalk(クロストーク)

クロストークはあるチャンネルに他のチャンネルの出力からLevelを減少させる望ましくない信号の漏れになります。これを消失することはかなり困難なことです。クロストークはチャンネル間で影響を及ぼした結果であって、周波数と共に上昇する傾向があります。

⑥Signal-to-Noise Ratio(信号とノイズの比率;SN比)

SN比はDUTの最小または最大時の運用Levelで設定された信号比になります。例えば最大値での利用の場合は、ダイナミックレンジと呼ばれます。SNRはマイナス(-)で示されます。SNRはまず信号Levelを測定して、その後、測定帯域に対してフィルターを施しながら、ジェネレーターをoffにしてノイズLevelを測定します。この二つの比率がSNRとなります。

R&Dの開発者から製造に携わるところで、オーディオ測定は様々な評価方法を求められます。各DUTにおけるベンチマークや処方の確立は技術者にとって、製品の開発や創造における明確な判断を導く手段となっています。

尚、詳細な情報を参照したい場合は、以下の英語版サイトをご参照願います。