非同期信号のWindowレス(窓関数を伴わない)解析は図1のようにFFT Windowの項目のプルダウンメニューで信号の選択ができるように改善されました。新しい項目として、None-move to bin centerという項目が追加されました。これを選択すると、取得して信号のドミナントトーンが決まり、信号に最も近いFFT周波数ビンの中央に来るようにサンプリングされます。
APx500ソフトウエアVer7.0ではFFT解析の柔軟性と有用性が大幅に改善され、オーディオ信号をより正確に解析できるようになりました。None – move to bin centerの設定項目を利用することで、Windowレス解析が実現でき、任意の長さの設定やレベルトリガーの機能も対応できるようになりました。さらに、ベンチモードで伝達関数が利用できる機能も追加されました。
DIMとTIMは矩形波、サイン波ソースを組み合わせたアンプへの動的な刺激信号として組み合わせるテストとして、DUTを介した2つのソース信号間の相互変調歪みのテストを可能としています。APx555にはこれらの機能が搭載しています。このテストの基本的な概念は、非常に高いかと信号(矩形波)とサイン波を組み合わせて、オーディオコンテンツの非常に動的なスペクトルを表す信号を生成できます。DIMはIEC 60268-3, sec. 14.12.9で規定されています。
#1Frequency Response, #2Continuous Sweep, #3Acoustic Response, #4Loudspeaker Production Test の4つの測定は、同じ技術(指数関数サイン波、またはチャープ技術)を使っています。#1Frequency Responseはシンプルに結果を表示します。これはチャープ信号を使って、短時間で測定ができます。#2Continuous Sweepは位相応答や歪み率等が加わっています。これもチャープ信号を使って測定致します。#3Acoustic Responseと#4 Loudspeaker Production Testはアコースティックトランスデューサーやスピーカーやマイクロホン等を測定する際に利用致します。また、インパルス応答に対する時間窓やゲートを制御できるようにもなっています。これは、無響室でない場所における反射を除外する際に利用できます。
#4Loudspeaker Production Testは周波数応答や歪み率、位相応答、インパルス応答やスピーカーのRub and Buzzやインピータンス測定やThiele-Smallパラメーター等の測定に利用致します。#5Stepped Frequency Sweepは最も古典的な周波数応答の測定方法です。サイン波を規定の間の周波数においてサイン波を発生させ、スイープしていきます。そして周波数応答、THD+N、THDや位相応答を測定致します。チャープ信号を使った測定に比べると、時間を要しますが、周波数の関数として、ノイズや歪み率を測定する唯一のソリューションであり、デファクトスタンダードの測定方法でもあります。
#6Bandpass Frequency Sweepもサイン波を使ったスイープ測定です。アコースティックデバイスを測定する際に利用致しますが、フィルターを用いて、高感度な信号を使ったStepped Frequency Sweepになります。Stepped Frequency Sweep は、広帯域でフィルターがかかっていない為、ノイズや歪みが含まれた結果を表示しますが、この測定を使うと、選択したWindow枠内の結果になるので、非常に高感度な結果を得られます。
#7Multitone Analyzerはオルガンのような多くのトーンを同時に利用した測定で、全てのキーを同時に下げていくようなトーンの音になっています。この測定のメリットは、チャープのような短時間での測定もありますが、ノイズやStepped Frequency Sweepのような非調和相関信号も測定ができます。逆にデメリットとしては、クレストファクターがサイン波やノイズやTD+Nの値よりも非常に高い値がでてしまうことです。これは高調波歪みや混変調歪み等が含まれている影響があります。
#8,9Transfer Functionはデバイスの周波数応答に変わる測定方法になります。昨今のモバイルハンドセットなどの通信機器はサイン波や他の信号を打ち消す最適な信号処理を行っており、従来の測定では、問題となっていました。Transfer functionはソースまたは刺激信号と応答信号の間の相関性を見出す測定になります。Transfer function に欠かせないものは刺激信号が周波数内でエネルギーを持っていることです。広帯域のノイズはテスト用としては非常に大きな信号ですが、人間のスピーチを録音して利用しています。この信号は、100Hz以下や4-10kHzの低いところでは、エネルギーは保有していませんが、有用な測定を行うには、何秒かのスピーチの情報を平均化する必要があります。
精度、解析度 全てのチャープをベースにした測定やTransfer functionは非常に高い解析度の測定になっています。短時間の測定の間に数千の測定ポイントを取得する精度となります。一方、Stepped frequency sweeps やMultitoneは100程度の測定ポイントで実行しております。 ノイズ耐性チャープをベースとした測定やMultitoneやBandpass Frequency Sweepは、あいまいなノイズに対して、高い耐性があります。一方 Stepped Frequency Sweepsや Transfer FunctionやSignal Analyzerはノイズを排除できませんし、また環境から発生するノイズによって、 バイアスされる結果となりえます。
今回のようなテスト信号の生成用に、Audio Precision社としては、該社のサイトから無料でダウンロードできます、APx Waveform Generator Utilityを準備しております。これは700kB程度の小さなプログラムで、様々なサンプルレートや、チャンネル数やビット長等を生成できるオーディオテスト信号として利用できます。これらは、シーケンスモードで利用できるように設計されています。このユーティリティーソフトを使った周波数スイープは、APxのStepped Frequency Sweep measurementにあるリストの一部として認識し、測定できます。お持ちのアナライザーがデジタルI/Oモジュールを搭載している場合は、デジタルループバックで録音し、高音質のwavファイルを生成できます。
frequency response measurementsにおいては、APxソフトウエアは以下の測定が可能です。 (1) オープンループ設定, (2)特定の刺激応答(例、Stepped Frequency Sweep, Multitone Analyzer, Continuous Sweep and Acoustic Response)便利なことに刺激し応答のwavファイルを自動生成致します。ただし、Transfer Function measurementにおいては、オープンループ周波数応答測定は可能ですが、wavファイルの生成はできません。
出力レンジ制御は、アナログOutput Settingダイアログの中にあります。図1のようにSignal Path SetupのOutput Configuration control groupのConnector Controlの右の歯車のアイコンをクリックすれば、利用できます。
図 1. Click the gear icon button beside the Output Connector control to access the Output Settings dialog.
デフォルトでは、Minimum Range fieldはAutoになっており、Range Maximumは、アナライザーのモデルやバランスド、アンバランスドにもよりますが、アナライザーが生成する最大電圧を示します。例えば、APx555Bで、アナログバランスド出力の条件では、26.66Vrmsを示します。
例えば、図1aに示しているような、一周波数に対するLevel and Gainの利得の値のようなものになります。図1bのような周波数応答測定の変位する周波数に対して、利得の推移を表すものもあります。また、インピーダンス測定のThiele-Smallパラメーターを使った結果表示は表形式で示されるものもあります。シーケンスモードによる測定では、全ての一次結果はプロジェクトに加えられる際に、有効となります。
図1. Examples of a Primary Meter Result (a) and XY Result (b) in the APx500 software
図3. The Add Derived Result dialog, showing (a) the Derived result pulldown menu, and Options sub-menus for (b) Min/Max Statistics, (c) Normalize/Invert, (d) Specify Data Points and (e) Smooth.
レベルは1.0Vrmsに設定しています。下のグラフは、信号の時間に対するRMSレベルを示したグラフになっています。ベンチモードで取得し、250ポイント/秒で測定しております。Rmsレベルは-115dBV(ノイズフロア)~-13dBVと変化しています。会話のレベルは約-25dBVで測定しています。信号の全てのrmsレベルの評価は、RMSから得られる結果から簡単に取得できます。(取得方法は、結果表示エリアにカーソールを置き、右クリックでAdd Derived Result – Min/Max Statistics – Single Value – RMSの順で設定致します。)
図1の全てのrms値は-23.085dBFSです。
図1. A speech waveform (top) loaded as a .wav file into the generator; the waveform acquired in analog loopback (middle) and its RMS Level versus time (bottom) recorded at 250 readings per second.
図2. The speech waveform of Figure 1 scaled such that the maximum instantaneous level is 1.0 D (top) and the waveform acquired when this signal is generated in analog loopback at a Generator Level of 1.0 VP